2026年7月、民間企業における障がい者の法定雇用率が2.7%に引き上げられました。社会全体で多様な働き方への関心が高まるなか、i-plugでは障がい者雇用に対してどのように向き合っているのか。今回は、i-plugで障がい者雇用チームを立ち上げた執行役員CHROの土泉さんと、日々の実務とマネジメントを担う河口さんにインタビューしました。法改正という節目において、i-plugが大切にしている思いや取り組み、そして目指す組織の姿について伺います。
単なる義務ではない。i-plugが障がい者雇用と向き合い続ける背景
北島2026年7月、民間企業の法定雇用率が2.5%から2.7%に引き上げられました。i-plugでは以前から障がい者雇用に力を入れてきましたが、社会全体で関心が高まっている今、改めてi-plugのスタンスを教えてください。
河口今回の改定は法定雇用率が引き上げられただけでなく、対象となる企業規模も43.5人以上から37.5人以上に拡大されました。これにより、初めて障がい者雇用に向き合う企業も増えています。
しかし、i-plugはこれを単なる「法定雇用率を達成するための義務」とは捉えていません。障がい者雇用は「事業推進のパートナーを得る機会」だと考えているからです。障がいのある方の特性を正しく理解し、適切な支援と業務の切り出しを行えば、想像以上の力を発揮してくれる方がほとんどです。
土泉障がい者雇用において、「補助的なサポート業務しかお願いできないのではないか」「任せられる業務の幅が限られているのではないか」といった無意識の偏見、いわゆるアンコンシャス・バイアスがいまだに存在していると感じています。
しかし、独学で資格を取得したり、意欲的に業務の幅を広げようと取り組んだり、やりたいことに挑戦したいと願う方はたくさんいらっしゃいます。企業側が活躍の場を最初から狭めてしまうのは、もったいないことです。
壁を乗り越え、自分自身の可能性を証明しようとする人を応援し、メンバーの可能性を広げていく。これこそが「つながりで、人の可能性があふれる社会をつくる」という当社のMissionを体現する取り組みであり、達成に向けた組織作りです。そして、可能性を広げる対象には障がいの有無は関係ありません。
i-plugのリアルな取り組み:社内アウトソーシング「OSSチーム」の挑戦
土泉大きな転機となったのは、会社が上場したタイミングです。事業を拡大していくために、既存の社員にはより創造的で企画的な業務へシフトしてもらう必要がありました。そこで、定型的なオペレーション業務を各部署から切り出したのです。切り出した業務を専門する社内アウトソーシングセンターとして立ち上げたのが「OSS(オペレーション・サポート・サービス)チーム」です。現在、障がい者雇用のメンバーは会社全体で11名です。そのうち9名がOSSチームに、残りの2名が他部署に所属して活躍しています。
河口依頼元の部署に対する「品質担保」は強く意識しています。ミスを防ぐため、原則として一つの業務を2名以上の体制で担当し、ダブルチェックを徹底しています。この体制により、急な体調不良や休職が発生した際にもスムーズにバックアップができ、本人が安心して業務に取り組める環境を整えています。また、週1回の全体朝会や毎日の業務ミーティングをオンラインで実施しています。日々の業務については、チャットでの報告・連絡・相談は徹底してもらい、負担の少ないスムーズな連携を実現しています。
「AI活用」がもたらした工数削減とメンバーの成長
北島OSSチーム内でAIの活用も進んでいるんですよね。
土泉前提として、我々は社内の生産性と品質を高めることを目的としたオペレーションセンターを目指しています。そのため、AIを活用して自分たちの生産性をさらに高め、より高品質な成果を部門に還元していくことは必然だと考えています。
また、世の中のAIの発展によって「働く居場所が減少するのではないか」との見解もありますが、メンバーにはAIを活用して価値を創る側になってほしいという想いもあります。そのような背景から、OSSチーム内ではAI活用の取り組みを進めています。
河口具体的には、OSSチームの中から「AI促進担当」を2名選任し、最新情報のキャッチアップや業務効率化を進めています。週1回のOSSチームでの朝会でもAIについて触れる時間を設け、最新情報の共有や、活用事例のナレッジ化を行っています。
OSSチームでは、日々の「業務進捗報告」で各業務にかかる工数を細かく管理しているなかでAI導入の明確な成果が見えてきました。たとえば、30分かかっていた業務が5分で終わるなどです。チームが対応する業務量自体は増えているにもかかわらず、年間100時間以上の工数削減を実現できていることがわかったのです。
河口大きな変化がありました。私は、障がいのあるメンバーの特性とAIは非常に相性が良いと感じています。一人ひとり得意なことや苦手なことは異なりますが、AIは苦手な部分を補い、得意なことをさらに伸ばすサポートをしてくれます。例えば、社外へのメール作成や文章をまとめることが苦手な方、あるいは目視でのダブルチェックで見落としが出やすい方でも、AIを活用することで、その「苦手」をカバーできるようになりました。その結果、これまで難しかった業務にも挑戦できるようになり、自信やモチベーションの向上にもつながっています。
AIはすべてを解決する魔法ではありませんし、人の代わりになるものではありません。しかし、一人ひとりの可能性を広げ、できることを増やすための心強いパートナーです。私は、今後もAIの活用によって、障がい者雇用の可能性はさらに広がっていくと考えています。
「定着」と「社内理解」を生む独自の仕組み
北島障がいのあるメンバーが長く安心して働けるためのサポート(定着支援)についても教えてください。
土泉i-plugでは、会社が定める方針やチームのルールに基づき、オフィスへの出社とリモートワークを柔軟に組み合わせる「ハイブリッドワーク」を導入しています。メンバーのなかには通勤や対面環境が負担になりやすい特性の方もいます。そうした方でもリモートワークを活用することで、体調に影響を出さずに本来の力を発揮してもらえます。
河口日々のフォローアップは、毎朝「健康管理アンケート」を実施しています。体温や服薬状況だけでなく、「気分」や「業務で困ったことがないか」といった前日の振り返りも含めて回答してもらいます。環境変化による小さなサインに早期に気づくことで、体調の悪化を未然に防ぐことができています。
また、入社後には6ヶ月間の「相互理解期間」を設けています。実際の業務を通じて、自身の適性や体調の安定性を、本人と私たちの双方が納得いくまで確認。長期的に無理なく活躍できると判断したうえで正社員へ登用しているため、高い定着率と安定した稼働を維持できています。
そして、独自のグレード評価や正社員登用基準など、障がい者雇用のための人事制度も整備しています。最終的には会社全体の人事評価制度へステップアップできるよう、キャリアの道筋も広げています。
北島社内の他部署のメンバーへの理解促進も欠かせないですよね。
土泉多くの方がそうだと思うのですが、日常生活のなかで障がいのある方と直接関わる機会は、あまり多くないのではないでしょうか。そのため、どうしても実態と乖離したイメージを持ってしまったり、無意識の偏見を抱いてしまったりすることが少なくありません。だからこそ当社では、新卒・中途を問わず入社時の研修で、アンコンシャス・バイアスについての研修を実施しています。そのなかで、OSSチームの役割や実際の業務内容、メンバーの活躍を伝えることで、多様性への理解を深め、偏見をなくす働きかけを行っています。
その結果、今では社内の各部署から「こんな業務もお願いできるか」と相談が絶えません。現在ではチーム全体で、年間100種類以上の業務を担うまでに成長しました。
河口事務運用やテクニカルな実務に幅広く対応しています。具体的には、データの更新や集計、商談準備のサポートなど、各部門がコア業務に専念できるための業務です。なかには、それらの業務に自らAIを駆使し、マニュアル化を進めて属人化を防ぐ仕組みづくりを行っているメンバーもいます。また、趣味である動画制作のスキルを活かして、社内初の動画制作担当を任されているメンバーも。社内イベントで使用する動画のほとんどを制作しているほか、現在では株主総会などの重要な動画制作も担い、自ら構成や演出も提案する一人前のクリエイターとして活躍しています。
北島実際に社員からは、どのような声が届いていますか。
河口たくさんの感謝の声が届いています!このような言葉が、OSSチームのメンバーにとっても「会社に貢献できている」という自信やモチベーションにつながっています。
【社員からの声】
・動画制作を依頼しました。かなりのボリューム、かつ難しい内容にも関わらず、柔軟に自分ごと化して取り組んでくれました。その結果、予想を超えたクオリティの納品物が!納期に関してもかなりコミットしてもらった進行でした。本当にありがとうございます!(法人マーケティンググループ)
・即対応かつ丁寧でクオリティの高い対応をしてもらい、いつも助かってます!細かな内容でも丁寧に連携してくれるので不足なく業務を進めることができています。(営業推進グループ)
・依頼した内容について不明点がある際、オンラインミーティングを実施して理解に努めてくれています。こちらの意図を汲み取ってしっかり対応したいと思ってくれている感じ、とても嬉しく思いました。(OfferBoxPLUS事業推進部)
外部への発信:マイナビパートナーズ主催の勉強会に登壇
河口マイナビパートナーズ様が主催する「中小企業の採用・定着・活躍を実現する障がい者雇用とは」をテーマにした勉強会に土泉と登壇させていただきました。私から皆さんにお伝えしたのは、「最初から完璧を求めず、失敗を恐れずに挑戦できる環境を作ることが大切」ということです。共創する仲間として関係性を築ければ、必ず組織の推進力になると改めて実感しました。
過去にも京都文教大学での講演や、中央法規出版「図解でわかる障害者雇用と就労支援」への掲載など、社外への発信にも積極的に取り組んでいます。こうした私たちのリアルな経験が、社会全体の障がい者雇用の推進に少しでも貢献できればと思いがあるからです。
多様性をチカラに変える組織へ
北島最後に、今後のOSSチームの展望や、お二人の組織づくりに対する思いを教えてください。最後に、今後のOSSチームの展望や、お二人の組織づくりに対する思いを教えてください。
河口OSSチームのメンバーは、日々新しい業務に挑戦し、そのたびに私たちの想像を超える成長を見せてくれています。私は、その成長は本人の努力だけでなく、適切な業務設計や挑戦できる環境があってこそ生まれるものだと考えています。だからこそ、一人ひとりの強みや可能性を引き出せる環境をつくり続けることが、私の役割だと思っています。
今やOSSチームは、単なるサポート組織ではなく、事業を支える重要なパートナーとして社内に欠かせない存在となっています。これからもメンバー一人ひとりが可能性を広げ、新たな価値を生み出しながら、会社とともに成長していける組織をつくっていきたいと考えています。
土泉私からは、障がいのあるメンバーにも「企業の一員としてどう会社に貢献するか」を考えながら、日々の業務に取り組んでほしいと思っています。仕事を通じてやりたいことを発見し、社会のなかで充実した自分に近づいていくことは、自分自身はもちろん、ご家族の安心や幸せにもつながります。
そして、メンバーが企業にとっての「戦力」となり、社員一人ひとりが「可能性を潰すことなく自己実現できる組織」をこれからも目指し続けたいです。私たちのこうした取り組みを通じて、社会全体の障がい者雇用領域の変革にも貢献していきたいと考えています。
おわりに
障がい者雇用は単なる義務ではなく、企業と社員が共に成長し、事業を力強く前進させるための「パートナーシップ」なのだと改めて感じました。法定雇用率が引き上げられ、社会全体が多様な働き方を模索する今、i-plugはこれからも「つながりで、人の可能性があふれる社会をつくる」というMissionを体現し、あらゆる人がそれぞれの強みを発揮できる組織づくりに全力で取り組んでいきます。




